【４・シンデレラ プロジェクト】
Ｍｉｎｋの笑顔の残像に、しばらくはぼーっとしていた。それから、ふと我に返る。
「割ったカップを片付けなきゃ」
簡易キッチンへと戻る前に、事務所に置いてあるラジオをつける。Ｍｉｎｋｌｅがパーソナリティを勤める生放送のラジオ番組が、ちょうど始まるところだった。ＯＰに３人のデビュー曲「Ｔｗｉｎｋｌｅ Ｍｉｎｋｌｅ ＳＴＡＲ」が流れて来た。
カップのカケラを片付け、は途中で放り出した洗い物を続けた。大好きな曲につられて、ラジオに合わせて歌詞を口ずさむ。
「Ｔｗｉｎｋｌｅ Ｓｔａｒ〜♪ 女の子はだれもがヒロイン たいくつなしあわせ けとばしてゆこうよ〜♪ たったひとつの ゆずれない輝く星をめざして〜♪」
洗い物を終え、濡れた手をハンドタオルで拭きながら簡易キッチンを出る。途端にはドキリとなった。
半ば開いた事務所のドアの前で、たたずんでいる人物がいた。廊下の明かりを背負ったその人は、一瞬、後光が射して見えた。
「ドアが開いていたものだから。勝手に入ってスイマセン」
そう言って、相手は緊張した面持ちで頭を下げた。その顔を見て、は口をぽかんと開けた。
「イリヤくんっ！？ 本物のイリヤくんだ〜っ!! テレビとそっくりっ!!」
それは「ＪＵＧＡＮＮＡ」の人気ボーカリストであり、“ガルーダ・イリヤ・レーベル”略して“ＧＩＬ”を背負って立つ名プロデューサーでもある青年だった。イリヤはの絶叫にクスッと笑い、片手を差し出した。
「初めまして。イリヤです。キミはＢ．Ｍの新人タレント？ 名前は？」
深い藍色の瞳に見つめられ、吸いこまれそうな引力を感じながら、はその手を取った。
「初めましてっ！ お会いできて光栄です！ 私はバード･ミュージックの事務アルバイトで、と申します！」
「バイトのさん…？」
イリヤは不思議そうに繰り返し、それから丁寧に説明した。
「今朝、Ｌ．Ａ．から成田に着いたばかりでね。たまたま近くを通ったものだから、Ｍｉｎｋちゃんか鳥海に会えるかと思ったんだけど、アポなしでいきなり訪ねても、やはり無理か…」
「あ、はい！ あいにく今、若社長とうちのタレントは全員、出払っております。私でよろしければ、ご用件を承りますけれど」
「…そうだな」
考えこむイリヤ。…次の瞬間、お腹の鳴る音が事務所に響いた。
「ゴメン。今日は機内食以外、何も食べてないから」
イリヤは耳まで赤くなってお腹を押さえた。その恥ずかしそうな表情に、は思わず吹き出した。
「カップケーキがあるんですけど、よろしければ召し上がりませんか？ Ｍｉｎｋちゃんと私の手作りなんです」
応接セットに腰を下ろしたイリヤは、の淹れた砂糖たっぷりのミルクティを飲み、カップケーキを美味しそうに口にした。
かけ放しのラジオから、リスナーのリクエスト曲の合間に、Ｍｉｎｋｌｅの楽しそうなおしゃべりが流れて来る。イリヤの向かいに腰掛け、は憧れのアーティストと出会えた興奮を味わっていた。
ケーキクズひとつ残さず、カップの最後の１滴まで飲み干して、イリヤはホッと息をついた。
「うまかったよ。…ありがとう」
甘い物で長旅の疲れがほぐれたのか、固かった表情が柔らかくなり、穏やかな笑みが浮かんでいる。はオムには悪いが、ケーキが余っていて本当に良かったと感じた。
「ううん、こちらこそ、イリヤく…イリヤさんに食べていただいて嬉しいです！」
『イリヤくん』と言いかけるのを『さん付け』に直す。するとイリヤは、いたずらっぽく片目をつぶってみせた。
「そんなに堅苦しくしないで、もっと自然に話してよ。オレの事は『くん』でいいから。…その代わり、オレも『ちゃん』って呼んでいい？」
「はい！」
思わず大きな声で返事してから、は自分の調子の良さに赤面した。そんなを面白そうに眺めていたイリヤは、ソファから身を乗り出した。
「さっき、ラジオに合わせて、オレの曲を歌ってくれてたのはちゃんだろう？ とびきりうまくはないけど、素直に伸びるいい声をしてる。楽しそうに心をこめて歌ってくれてて嬉しかった。…キミは本当にＢ．Ｍ所属のタレントじゃないの？」
Ｍｉｎｋｌｅデビュー曲をプロデュースしたのは、イリヤだったとは思い出した。イリヤに自分の歌を聞かれていた事にドギマギしながら、首を横に振る。
「違います！ 私なんて、全然スタイルだって良くないし、可愛くないし…。アイドルなんて無理です！」
「…ふうん」
イリヤの藍色の瞳が細められ、怒ったように口の中で呟いた。「鳥海は何をしてるんだ？」と言った気がした。
「え？ あの、なにか…？」
が聞き返すと、イリヤはとんでもない事を言い出した。
「ちゃん、今日この後、時間ある？」
「あ、はい。今日はもう事務所の戸締りをして帰るだけですけど…」
の返事にうなずくと、イリヤは携帯を取り出した。コール数回で出た相手に、矢継ぎ早に指示を出す。
「宮ちゃん？ オレ。今日の仕事はみんなキャンセルして。あと、『スタジオＡ』と『ショップ美樹』にコールして予約空けさせて。これからすぐに行くから」
受話器越しに哀れっぽい悲鳴が届いたが、無情にもイリヤはぷっつりと電話を切った。そして、イリヤはを振り返り、眩しい笑顔を見せた。
「じゃあ、出かけよう。ご馳走のお礼に、キミにプレゼントがあるんだ」
…その笑顔に惹かれて、はイリヤのうながすまま、彼の運転するベンツに乗りこんだ。
※※※※※
イリヤがを連れて行ったのは、おしゃれなショップが立ち並ぶ通りの美容院だった。シックな外観と飾られている看板の『完全予約制』の文字に、はおじけづいた。
「…高そう…」
思わず後ろを向いて逃げ出しかけるを捕まえて、イリヤは店の扉を開けた。すると暖かな笑顔の男性が出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「麻見さん、いきなり予約を入れてすみません。彼女に１番似合う髪形をお願いします」
イリヤの言葉を聞いて、は美容師の顔をテレビで見た事に気がついた。「どんなお客さんでも、いっとー似合う髪形を見つけてくれる」事で有名なカリスマ美容師として、情報番組で紹介していたのだ。
「分かりました」と麻見はニッコリ笑い、をシャンプー台へ導いた。
シャンプーカット、軽くカラーリング、そしてブロー、更にメイクまで。全てが終了し、「さあ、どうぞ」と促されて、は恐る恐る鏡を見た。
そこには、とまどいの表情でこちらを見返している、愛らしい女性が映っていた。
「ウソ…。これが私…？」
「まだ驚くのは早い。次へ行くよ」
イリヤは麻見に礼を言うと、すぐさまを連れ出した。次に２人が訪れたのは華やかなドレスショップ。出迎えたのは、優しげな雰囲気の女性だった。
「美樹さん、ワガママを言ってすみません。彼女にピッタリのコーディネートをしていただけませんか？」
イリヤの紹介で、は彼女が新進気鋭のデザイナー、ミキ・コウノである事を知った。
「いらっしゃい、イリヤさん。素敵な方をお連れですね。腕のふるいがいがありますわ」
ニッコリ微笑むと、美樹はをフィッティングルームへ案内した。
それから１時間後、ドレスショップの前には、華やかなドレスをまとった愛らしいの姿があった。
「さあ、これから本番だ」
イリヤに言われて、再びベンツに乗りこむ。そして最後にイリヤがを連れて行ったのは、こじんまりとしたライブハウスだった。『ＭＵＳＩＣ ＢＯＸ』と書かれた店の壁を懐かしげにイリヤは見た。
「『ＪＵＧＡＮＮＡ』がプロデビューする前に、演奏していたライブハウスなんだ。…あの頃はろくにお客も入らなくて…、でもステージで歌えるだけで幸せだった」
イリヤにも無名の時代があった事に、は驚きつつも、胸が暖かくなって微笑んだ。
「ここはイリヤくんにとって大切な原点なんですね」
イリヤに手を取られ、はライブハウスに入った。狭い室内の奥にステージがあり、機材が準備されている。まもなくライブが始まるのだろう。ステージの上で打ち合わせをしていた数人の男性が、イリヤを見つけて親しげに手を振った。
「イリヤ、女の子連れでどうしたんだ？」
「美人じゃないか。紹介しろよ」
からかい混じりの言葉を、肩をすくめてさらっと流し、イリヤはステージに歩み寄った。
「久々のステージを彼女にも聞かせてあげたくてね。いいかな？」
親指を立てて口笛を吹き、１人の男性がステージの袖に椅子を１脚用意してくれた。
「もうすぐ開場だ。ここで座って聞いてもらえばいいよ」
パンフレットを渡され、は状況を理解した。今夜はここのライブハウスのステージで、バンドのライブがあり、古い友人であるイリヤが飛び入り参加する予定らしかった。ワクワクしながらが待っていると、ライブハウスが開場になった。
今日演奏するのは、ライブハウスでは目玉のバンドらしく、室内はオールスタンディングにも関わらず、たちまちファンで一杯になった。
時間になると、室内の明かりが消され、ステージにスポットライトがかかる。ステージの袖から出て来た男性達に、ファンが歓声を上げる。
「さて今日はみんなもビックリの特別ゲストが来てくれてます。…イリヤ！」
バンドボーカルの紹介に、ライブハウスの興奮は絶頂まで達した。
ＯＰが始まり、豊かなサウンドと弾んだメロディに全身が包みこまれる。は緊張や疲れが洗い流され、心が澄んでいくのを感じた。そしていつしか、ファン達と一緒に、夢中になって拍手していた。
イリヤは自身のソロ曲や、そのバンドのオリジナル曲を何曲か歌った後、袖に戻って来た。汗をタオルで拭いているイリヤに興奮気味には話しかけた。
「すごく良かったです！ 素敵なライブに招いてくださって、本当にありがとうございました！」
「こちらこそ喜んでくれて嬉しいよ。ありがとう」
ニッコリした後、イリヤはふと耳を澄ました。ステージからはバラードが流れて来るところだった。イリヤはいきなりの両手を取って、立ち上がらせた。
「キミ、ダンスはできる？」
唐突に尋ねられ、「とんでもない」とはぶんぶんと首を横に振った。
「簡単だよ。オレがリードするから、ついてくればいい」
そう言うと、イリヤはステップを踏み始めた。手を振りほどく事もできず、表情をこわばらせて、は恐る恐るそれに従った。
しかし、すぐにイリヤの言う通りだと悟った。ステップは全く分からないが、イリヤが力強くリードしてくれる。イリヤの歩みに合わせれば、彼の足を踏みつける心配もない。
次第に緊張がほぐれ、いつしかはクスクス笑いながら、イリヤと一緒に軽やかにステップを踏んでいた。
バラードが数曲続き、アップテンポな曲に変わると、２人は息を切らして床に座りこんだ。
まだクスクス笑いが続いているに、イリヤはいたずらっぽくウィンクした。
「やっと本当に“キミらしい”最高の笑顔を見せてくれたね。外見やスタイルは髪型やドレスでいくらでも変えられるし、歌やダンスは特別な才能を持つ者だけのものじゃない。…人を本当に魅力的に見せるのは、その人の心が持つキラメキなんだ」
イリヤが何故自分を連れ出したか、その真意にやっと気付き、は言葉を失った。
「ごく普通の女性でも、ほんの少し勇気と自信を持って踏み出せば、光り輝く魅力的な存在になれる。…ちゃん、キミはそれを世界中に証明したいとは思わないか？」
イリヤはの手を握り締め、熱く言い募った。
「…キミを“ＧＩＬ”の看板アーティストとして、プロデュースしたい」
※※※※※
翌日、バードミュージック事務所は大騒ぎになった。
イリヤが、のプロデュースと、ガイア･プロダクションへの移籍の申し入れのために、たった１人で事務所を訪れたのだ。ソファに腰掛けたイリヤに向かい、モトハル達は気炎を上げた。
「断る！ ウチの事務所にとっては欠かせない人材なんだ！」
パンッとテーブルを叩いて、モトハルがいきり立つ。
「そーだ、そーだ！ 移籍反対！」
モトハルの背後で、うんうんとうなづくのは真帆子と叶花とオム。
「みんくと有香もなんか言ってやってよ」
真帆子がそう言うと、ぼーっとモトハルとイリヤのやり取りを見ていたみんくが、ぼんやり呟いた。
「…ちゃんをイリヤくんがプロデュース…。素敵素敵素敵…∞♪」
「有香もそう思いま〜す♪ ちゃんが全米デビューするなんて、有香、カンゲキ〜♪ 憧れちゃう〜♪」
自分の世界に入ったままのみんくと有香に、叶花と真帆子はこの２人に反対意見を求めるだけ無駄と諦めたらしかった。今度はモトハルと並んでソファに腰掛けるに矛先を向ける。
「ちゃんも移籍するつもりはないって言ってやりなよ。Ｂ．Ｍはガイア･プロ移籍問題でもめるのは、もうゴメンだって」
「そうだよ。Ｍｉｎｋの移籍が持ち上がった時に、こっちはひどい目にあったんだからね！ Ｍｉｎｋの次はちゃんを連れて行こうなんて許せない！」
怨みのこもった叶花と真帆子の言い分に、後ろめたい過去のあるイリヤも言葉が出ないようだった。
『ちゃんはボクたちを置いて、どこにも行かないよね…？』
うるうる目のオムに尋ねられ、はあせった。言葉に詰まりながらも、イリヤに向かって言い訳を試みる。
「デビューも何も、私はただのＢ．Ｍの事務アルバイトですし、いきなりプロデュースとか、事務所移籍とか言われても困ります」
イリヤの藍色の瞳が、まっすぐに向けられた。それからモトハル、真帆子、叶花、みんく、有香、オムへと視線を移して、再びへと戻った。
「…確かに“ＧＩＬ”デビューの時は、Ｍｉｎｋちゃんを移籍させようと、うちのプロダクションが強引なやり方をして、オレはそれを止められなかった。Ｍｉｎｋちゃんやキミ達を傷つけてしまって、本当にすまない」
イリヤの顔を苦痛がよぎり、深く頭を下げた。その表情に、彼がＭｉｎｋに恋している事をはとっさに悟った。
ーもしかして、イリヤくんはＭｉｎｋちゃんが好きで、だから一緒にＬ．Ａ．へ行って欲しかったの…？ でも、みんくちゃんはモトハルくんが好きだから、イリヤくんの想いに応えられなくて…それで移籍話は潰れちゃったんだ。―
一昨年、世間をお騒がせしたＭｉｎｋの移籍問題の核心に触れ、なぜかの胸はチクチク痛んだ。
―イリヤくんにとって、私はＭｉｎｋちゃんの代わり…？ だから、こんなに熱心に移籍を勧めてくれるの…？―
の心の動きを知るよしもなく、イリヤは熱心に言い募った。
「“ＧＩＬ”の活動も今は軌道に乗って、オレの意志を通せるようになった。もう事務所の言いなりにはならない。だから今日はオレ１人でＢ．Ｍに来たんだ。きちんとオレから事情を話して、ちゃんやキミ達に理解してもらうために。…ちゃんは今度こそ必ずオレが守り抜く。だから、プロデュースさせて欲しい」
真摯なイリヤの態度に、もともとイリヤのファンである真帆子、それに彼を悪くも思っていない叶花が少しずつ静かになる。
そしてイリヤは、次の“ＧＩＬ”のメインテーマは“Ｂｌｏｏｍｉｎ’！ Ｐｒｏｊｅｃｔ”だと説明した。ごく普通の少女が、イリヤのプロデュースによって、魅力を開花させていくのがコンセプトだと言う。
「デビュー前からプロっぽいアイドルじゃなく、自分でも気付かないダイヤの原石を、内に秘めた女性をデビューさせる。それによって、世界中の女の子に夢と希望を与えたいんだ」
イリヤの説明に、モトハルが両腕を組んで「うんうん」とうなずいた。どこか相通じるものがあるらしい。
「…なんか分かるな。オレも初めてＭｉｎｋを見つけた時に思ったんだ。キラキラしてダイヤモンドみたいだって。…あのコを包む天使の羽が、オレには見えたんだ」
「…先輩…」
みんくの頬が赤らみ、瞳がうるむ。だが、その表情は悲しげだった。モトハルが見つけたダイヤモンドは、今も隣にいるのに、彼はその事に気付いていないのだ。思わず、は隣にいるモトハルをぶってやりたくなった。だが、みんなの前でモトハルをひっぱたく訳にもいかない。
その時、有香が不思議そうに言い出した。
「でも、普通の女の子をシンデレラにするプロジェクトなら、ど〜してちゃんじゃないとダメなの〜？ 有香、フシギっ♪」
「そうですよ！ 私なんか選ばなくても、もっとふさわしい人が、他にいくらでもいると思います」
有香の言葉には大きくうなずき、それから小さな声で付け加えた。
「私は…Ｍｉｎｋちゃんの代わりにはなれません」
イリヤの瞳が怒りをたたえて、を射抜いた。
「Ｍｉｎｋちゃんの“ＧＩＬ”デビューはもう過去の話だ。今のキミとは何も関係ない。…ちゃん、キミの叶えたい夢はなに？ 歌手にこだわらなくてもいい。キミの望むステージへの道を“ＧＩＬ”が全面的にバックアップするよ。オレがプロデュースしたからと言って、すぐにキミの夢が叶う訳ではないけど、きっと手助けはできる」
ー私の叶えたい…夢？―
イリヤの熱心な説得に、Ｂ．Ｍのメンバーも反発の空気が失われて行く。徐々に追いつめられ、はおずおずと尋ねた。
「…でも…どうして…そこまで私なんかを…」
イリヤの怒りが和らぎ、優しく笑った。
「キミのケーキとミルクティが美味しかったから。それと、オレの歌を楽しそうに歌ってくれて嬉しかったから、かな。『Ｔｗｉｎｋｌｅ Ｍｉｎｋｌｅ ＳＴＡＲ』は、全ての女の子が持つ、未知の可能性をテーマにした歌だから。キミに賭けてみたくなったんだ」
ーどうしよう…？ イリヤくんがここまで言ってくれるんだし…―
の心がぐらついた瞬間、場の雰囲気をぶち壊したのはオムくんだった。うわ〜んと大きな声で泣き出したのだ。
『ちゃんが遠くに行っちゃうなんて、ボク、嫌だ〜！』
同時にの心にも、大好きなＢ．Ｍのみんなと別れたくないという思いが蘇った。
大きく深呼吸した後、は思い切ってイリヤの顔をまっすぐに見た。
「…とても魅力的なお話だと思います。でも、私はＢ．Ｍの仕事が好きだし、家族や友達と離れて、日本を離れる事にも抵抗があります。…今すぐに結論を出すのは無理です。しばらく考えさせてもらえませんか？」
仕方がないな…とイリヤは苦笑した。
「オレは今年いっぱい、日本に滞在して、いくつかの仕事と新プロジェクトのための人選をする予定なんだ。だから、オレがＬ．Ａ．に戻る日までに結論を出して欲しい」
「もし、が断ったら、プロジェクト自体が潰れてしまうんですか？」
モトハルの質問に「いいや」とイリヤは首を横に振った。
「オレが日本国内で選ばなかった場合、Ｌ．Ａ．に戻ってから、オーディションを行う事になる。…でも、オレとしてはちゃんを連れて帰りたい。いい返事を期待してるよ」
そのままイリヤは帰って行った。残された事務所のメンバー全員を見回して、モトハルが言い切った。
「とにかくが結論を出すまで、この問題は置いておこう。事務所のスキャンダルにも関わるから、事務所の外では絶対に他言無用だぞ」
モトハルは「これは社長代理としての業務命令だ」と言い渡し、その場は解散となった。
続く
＜あとがき＞
やっとイリヤくんが登場しました（笑） 途中に登場した美容師さんとデザイナーさんには元ネタがあります。
『夢食案内人』Dream１「ラプンツェル・シャンプー」に登場する麻見くんと、
『怪盗セイント･テール』第９話「ウェディング・リハーサル」に登場する河野美樹ちゃんです。
麻見くんや美樹ちゃんなら、完全予約制のカリスマ店長より、誰でも気軽に入れる素敵なお店で出迎えて欲しいですが、
ストーリーのテーマ上、こういう登場の仕方をさせてしまいました。ごめんなさい。
「ビ○ーティ・コロ○アム」とかたまに見ますけど、プロの手にかかると同じ人が全く違って見えるのが不思議ですよね。
私も改造して欲しい…ただで（笑）
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