星のララバイ
【１・ＷＡＮＴＥＤ！】
怪盗はちょっと変わったドロボウ（？）である。
なにしろ決して物は盗まない。…その代わり、忍びこんだ家に、かつてその家から盗まれた物を『お返しします 怪盗』と書かれた１枚のカードと共に、置いていくのだ。返されるのは物も年代もさまざまで、古い物では江戸時代に盗まれた家宝の壺から、新しい物は１４年前に宝石店から盗まれた宝石まで。
警察では、過去の窃盗事件の重要参考人及び家宅侵入罪等々の容疑で、その行方を追っているが、いまだ逮捕どころか、その正体すらつかめていない。噂では、変装の名人だとか、オリンピック級の運動能力の持ち主だとか、絶世の美女だとか言われている。
…だが、実は彼女が、という名前の中学二年生の少女である事は、本人だけの秘密である。
☆★☆★☆
聖華市立美術館の屋根の一角。盛んに回っているサーチライトを避けるようにして、黒装束の影がうずくまっていた。
黒装束の主…は、首をわずかに伸ばして、眼下を見渡すと、ぼやいた。
「まったくもう。どうしてこんな日にドロボウに入っちゃったんだろう。これじゃ仕事ができないよ」
美術館の周囲には大量のサーチライト、その上、十重二十重に警察官が取り巻いている。警官隊に激を飛ばしている警備責任者は、小柄な少年だった。少年が身につけている制服は、市内にある聖ポーリア学院中等部の物である。彼らはがここに忍びこんだ直後にやって来て、厳重な包囲網を敷いてしまったのだ。
もっとも彼らが捕まえようとしているのは怪盗ではない。警備担当者の少年の名は飛鳥大貴。通称、アスカJr.。彼はこの聖華市では有名な、とあるドロボウの特別専任捜査官なのだ。
聖華市に越してきて、まだ間のないもアスカJr.と、彼が追っているドロボウの噂については、よく知っていた。
「さあ、セイント・テール！ どっからでも来い！」
握りこぶしで叫ぶアスカJr.を遠目に眺めながら、は深いため息をついた。
怪盗セイント・テール。分かっているのは、ポニーテールをなびかせた女性だと言うことのみで、その正体は誰も知らない。唯一、彼女を間近で見た事があるのは、彼女の専任捜査官、アスカJr.ただ１人だ。
怪盗セイント・テールもまた変わったドロボウである。彼女は決して私利私欲のために盗まない。セイント・テールが盗むのは、誰かが不正な手段で手に入れた物であり、彼女はいつもそれを悪人から取り上げ、本来の持ち主に返している。神出鬼没の正義のドロボウなのである。
そして、もうひとつ、セイント・テールが変わっているのは、盗みに入る前に必ず、彼女の特別捜査官であるアスカJr.あてに盗みの予告状を送って来ることだ。アスカJr.は毎回、予告状の示した先に警官隊を率いて現われ、セイント・テールを待ち構える。もっともこのあからさまな挑発にも関わらず、彼はいまだに、セイント・テールを捕まえられないでいるのだが…。
「今日、学校では、アスカJr.は予告状が来たなんて言ってなかったのに…。きっと放課後に予告状が来たんだわ…」
ひとしきりぼやくと、は覚悟を決めた。そっと祈りの形に両手を組む。
「とにかく、この巻物はちゃんと返さなきゃ。…主よ、どうぞお守りください」
組んだ手を放すと、は手近な窓に近寄った。耳元に手をやると、ヘアピンを１本引き抜き、鍵穴に手を当てる。ものの数秒で鍵は開いた。
物音を立てずに窓を開けると、はするりと中に入りこんだ。ぼやいていた割には、ためらいのない見事な身のこなしである。室内に入ると、さっきまで着ていた黒装束をさっと脱ぐ。すると、装束の下から美術館の警備員の服装が現われた。
ニセ警備員の姿をしたは、ポケットから出した警備員用の帽子を目深にかぶると、素早く廊下へ出た。
☆★☆★☆
「そこの人！」
突然、声をかけられ、は振り返った。背後で彼女を呼び止めたのは、さっきまで外にいたアスカJr.だった。近くに他の警官の姿はない。たまたま館内に１人で戻ったところのようだった。
内心の動揺を悟られないようにしながら、は野太い男の声色で応えた。
「なんでしょう？」
「交替時間にはまだなっていないはずだが、持ち場を離れて、どこへ行くんだ？」
「それが…。先ほど、巡回中に妙な物を拾いまして、ドロボウに関係あるのではないかと、警備主任に見ていただこうと持って来ました」
「今夜の警備主任はオレだ。見せてもらおうか」
「はい」
アスカＪｒ．が近づいた瞬間、は小さな香水瓶を差し出した。
ぷしゅっ。吹き出た霧をかいだ瞬間、アスカＪｒ．は昏倒した。すばやくアスカＪｒ.を抱きとめたは、壁際まで彼を引きずり、背中をもたれかけさせた。
かがみこんで、少年の顔色が良好であることを確認する。アスカＪｒ.は実に無防備な寝顔で、すーすーと寝息を立てていた。
「ごめん、アスカＪｒ.。家秘伝の香水だよ。すぐに目覚めるから安心して」
ペコリと頭を下げて、はそのまま立ち去ろうとした。その時、すぐ近くから、窓ガラスが割れる音が響いた。とっさには近くの物陰に隠れた。
熟練したドロボウであるは、誰かが足音をしのばせながら、小走りにこちらへ向かって来るのを聞き取っていた。
数秒後、暗闇に長いポニーテールがシルエットを描き、すらりとした女性が現われた。その足取りが突然、乱れる。
壁際に倒れこむアスカＪｒ.を発見したセイント・テールは、少年に向かって駆け寄った。
「アスカＪｒ.!? どうしたの!? しっかりして！」
悲鳴を上げながら、ぐったりとした少年を揺さぶる。回廊に設置された非常灯の薄明かりに、セイント・テールの顔が映し出される。
物陰で一部始終を見守っていたは、セイント・テールの顔を見た途端、息を呑んだ。
―芽美!? セイント・テールの正体は芽美だったの!?―
可憐なステージ衣装を身にまとい、長いポニーテールに黒いリボンを飾っていたのは、羽丘芽美。アスカＪｒ.のクラスメートだった。クラスでは何かと口ゲンカの絶えない２人だが、実はお似合いのカップルと評判で、彼らが両想いになるＸデーを賭けの対象にしている生徒もいる。その彼らがいわば究極の敵味方、探偵と怪盗という立場だったとは、にとって驚天動地だった。
なぜ芽美は捕まる危険を冒してまで、アスカＪｒ.に予告状を送り続けているのか、が首をひねっていると、アスカＪｒ.がうめき声を上げた。薬の効き目が切れて来たらしい。
「まて〜。せいんと・て〜る」
寝ぼけ声で言うと、アスカＪｒ.はがばっとセイント・テールの両腕を捕まえた。薬の影響でめまいがするのだろう。頭をぐらぐらさせながらも、セイント・テールの顔を見ようと首を傾ける。
「…いやっ！ 顔、見ないでっ！」
芽美が悲鳴を上げて、アスカＪｒ.から顔をそむける。
このままでは、セイント・テールの正体が、アスカＪｒ.にバレてしまう。そう思った瞬間、は手の中の物をアスカＪｒ.めがけて投げつけた。
物陰から投げられた巻物は、空中で一旦広がり、くるくるとアスカＪｒ．の顔に巻きついた。
「うわっ!? な、なんだ!? 前が見えねーぞっ！」
アスカＪｒ.が動揺した隙を突いて、セイント・テールはさっと手を離し、アスカＪｒ.の手の届かない天井にジャンプしていた。だが、彼女自身も訳が分からない様子で、きょろきょろと辺りを見回している。
はため息をつき、帽子を深くかぶって、顔を見せないようにしながら、セイント・テールとアスカＪｒ.の双方が、自分の姿を見える位置に立ち上がった。
「あたしは怪盗。巻物は確かにお返ししたわ」
ようやく顔を巻物から外したアスカＪｒ.はぽかんと口を開けて、女性の声で話す警備員を見つめた。
「待って。あなたは一体…」
セイント・テールが口を開いたが、次の瞬間、はポケットから黒いボールを取り出し、床に叩きつけていた。
閃光が辺りを包んだかと思うと、もうもうたる黒煙が吹き上がった。やがて煙が晴れた時には、その場には『お返しします 怪盗』と書かれた１枚のカードだけが残されており、人の姿はどこにもなかった。
「…すげー」
思わず呟いてから、アスカＪｒ.はハッと我に返った。
「他のドロボウに構ってる暇はない！ どこだ、セイント・テール!?」
だが、アスカＪｒ.が振り返った時には、もうセイント・テールの姿もどこにもなかった。そして、美術館の別棟から、警官隊の叫び声が上がる。
「やられた！ セイント・テールに『ホル・アクティの勾玉』が盗まれたぞっ！」
「なにぃ!?」
巻物を片手につかんだまま、アスカＪｒ.は別棟へ夢中で走っていった。
☆★☆★☆
翌日の聖華新聞の見出しは『少年探偵、またもお手柄！ 怪盗から巻物を奪取！』という内容だった。
朝、が登校すると、ＨＲ前の彼女のクラスも、その話題で持ちきりだった。
『Ｎｏｉｓｅな２人』との異名を持つ、歩く噂話シスターズ、恭子と涼子が新聞を広げて、きゃあきゃあ騒いでいる。２人の脇では、シスター見習いの深森聖良が穏やかな笑みを浮かべながら話を聞いていた。一方、聖良の親友の羽丘芽美は、席に着いて、必死で今日当たる宿題を解いている模様である。
「おはよう！」
が声をかけると、彼女達も思い思いに振り返って、笑顔で答えた。
「おはよう、！ ねえ、今朝の新聞、見た？」
涼子に問われ、は笑顔がひきつるのを覚えた。
「うん、一応…」
「アスカＪｒ.ってばすごいよね。怪盗セイント・テールだけじゃなく、怪盗まで間近で見ちゃったんだから！」
「ねっ？」と涼子に同意を求められて、は力なく「そうだね」とうなずいた。恭子も無邪気に瞳を輝かせて続ける。
「そうそう。アスカＪｒ.って、なんでも市長から『怪盗の捜査官も兼任して欲しい』って言われたんだって」
ガタンッと椅子が倒れる音がして、クラス中が振り返った。席に着いていた芽美がいきなり立ち上がったのだ。
「恭子ちゃん、それ本当!?」
血相を変える芽美に、恭子はうんうんとうなずいた。
「…そんな…」
ガックリうなだれる芽美に代わって、聖良が眉をひそめながら質問する。
「それで、アスカＪｒ.は引き受けたんですか？」
その時、会話を聞きつけた、聖ポーリア学院新聞部の自称敏腕記者、佐渡真人が出現した。かわいい女の子、特に聖良が興味を持つことなら、決して聞き逃さないのが彼である。ちゃっかり聖良の両手を握り、涙ながらに佐渡は訴えた。
「深森さん、それが飛鳥のヤツ、あっさり断ったらしいんですよ。怪盗のスクープを狙う、いい機会だったのに…」
くすくす笑いながら、涼子と恭子もうなずきあう。
「『オレが全力で捕まえたいのは、セイント・テールだけです』な〜んて言ったんだって」
「そんなこと言っても、ちっとも捕まえられないのにね〜」
同時に芽美が「はあ〜！」と大きなため息をついた。その顔には隠しきれない安堵がこもっている。からかいたくなったは、わざと芽美に向かって言った。
「芽美ったら、アスカＪｒ.が怪盗の捜査官にならなくて、嬉しそうだね。アスカＪｒ.には怪盗セイント・テール専任の捜査官でいて欲しいの？」
「…そっ、そんなことないもんっ！ ただ、あのヘナチョコ探偵には、１度に２人のドロボウなんて捕まえられっこないって思っただけ！」
芽美が真っ赤になるのを、は面白く見物した。
「…誰がヘナチョコだって？」
途端に地を這うような声が、会話を遮った。悪口を聞きつけたらしいアスカＪｒ.が、目一杯、機嫌の悪い顔つきで芽美に詰め寄る。一瞬、ギクッとなった芽美だったが、すかさず減らず口で応戦する。
「なによ。悔しかったら、セイント・テールを捕まえてみせなさいよ！」
「お前に言われなくたって、捕まえるに決まってるだろ！」
毎朝恒例の口げんかが始まる。けっこう楽しげにやりあう２人に、は微笑んだ。
なぜセイント・テールがアスカＪｒ.に予告状を送り続けているのか、なりに理由を感じ取ったからだった。
―好きな人に追いかけてもらいたいんだね、芽美は。例え、それが危険な綱渡りだったとしても…―
そういう相手に心当たりの無いは、ほんの少しセイント・テールが羨ましかった。…だが、そんな甘酸っぱい想いは、次の佐渡の問いかけで消し飛んだ。
「それで、怪盗の専任捜査官は、誰がすることになったんだ？」
「ああ、それは…」
芽美とのケンカを中断して、アスカＪｒ.が口を開く。だが、その続きを凛とした女の子の声が奪った。
「怪盗の専任捜査官はあたしよ」
全員が振り返ると、登校してきたばかりの様子の高宮リナが立っていた。
「叔父さまにお願いして、任務に就けてもらったの。怪盗なんていうふざけたコソドロは、このあたしが捕まえてみせるわ！」
「…あちゃー」
は無意識に十字を切ってしまった。
クラスでも群を抜いて背の高い高宮リナは、怪力の持ち主で、おまけに婦警志望。聖華市長の姪である特権を乱用して、あちこちの事件に首をつっこんでいる。コンバットマグナムを持ち出したとか、自らが盾になってのおとり捜査も辞さないとか、そのカゲキな捜査手法は聖華市犯罪史に残る語り草だった。
怪盗本人が話を聞いているとも知らず、リナはクラスメートの賞賛のまなざしに、得意げに肩をそびやかした。
「一応、アスカにもアドバイスはもらうけどね」
「“一応”とはなんだよ。専任捜査官は断ったけど、オレも市長から頼まれて、捜査の協力はすることになってるから。それに、専任捜査官は他にもいるだろう」
カチンと来たらしく、アスカＪｒ.が付け加える。
「高宮１人じゃ不安だって言うんで、オレの親父が任務に着いたんだ。過去の窃盗事件との関わりがあるっていうんで、警察の威信をかけて追うつもりらしい」
「飛鳥刑事がっ!?」
リナは面白くなさそうにふくれっつらをしただけだが、噂をしていた全員がざわめいた。これはかなり大がかりな捕物になりそうだという予感が、その場を走る。
…１人、は制服の内側にある、胸元にかかった十字架を握り締めた。
その時、授業開始５分前を告げる予鈴が鳴り響き、集まっていたクラスメートはそれぞれ慌てて、席に戻り始めた。自分も席に戻ろうとするを、聖良が呼び止めた。
「ちゃん、いえ、シスター、ちょっとお願いがあるんですが」
改まった呼びかけに、は小首をかしげて振り返った。
実はも、聖良と同じく聖ポーリア礼拝堂に所属するシスター見習いだった。
「今日の放課後、街の人の相談役の当番と、修道院の掃除当番を交替させて欲しいのですが…」
聖良の言葉に、は「あたしはかまわないけど、どうしたの？」と聞き返した。聖ポーリア礼拝堂に所属する、シスター見習いのつとめに、困っている街の人の話を聞くというものがある。たまたま今日の相談当番はで、掃除当番が聖良だった。
「先日、相談をうかがった方に、また今日もお話をうかがうと約束したものですから」
聖良の説明に、は納得した。実は、聖良に話すと不思議と悩みが解決するというのが、もっぱらの評判で、街の人の相談を聞くつとめは率先して聖良が引き受けることが多かったのである。
そういうことなら、とは快諾し、席に戻った。
☆★☆★☆
放課後、シスター姿になったは、礼拝堂横の修道院でミサに使う道具を磨いていた。頑張って磨いたおかげで、道具は全てピカピカになっていた。
「よし。全部きれいになったわ」
道具を礼拝堂にある棚にしまおうと、はそれらを布で包んで持ち出した。
礼拝堂に入り、棚の中に戻す。辺りを見回すと人影はない。聖良はどこへ行ったのかと、気にかかった。街の人の話を聞くには、礼拝堂の中で待機していなければならないはずだった。
その時、の耳がかすかな話し声を捉えた。声は礼拝堂の端のざんげ室から聞こえてくる。
「あかずのざんげ室!?」
そこは去年、鍵がなくなったとかで、それ以来、あかずのざんげ室と呼ばれていた部屋だった。なぜ、開かないはずの部屋から声がするのか、不審に思い、はそっとざんげ室へ近づいた。
鍵穴からそっと覗くと、そこには壁をはさんで、聖良と芽美の姿があった。
―聖良が相談を受けているのは芽美!?―
普通の人より鋭敏なの耳に、２人が話し合っている内容が届いた。
「アスカＪｒ.のネクタイからは、深森家秘伝の香水と同じ香りがしましたわ」
「じゃあ、怪盗の正体は聖良の知り合いなの!?」
芽美の問いに、聖良は「いいえ」と首を横に振った。
「わたしは芽美ちゃん以外の方に、あの香水のことを話したり、差し上げたりしたことはありませんもの。わたしの母も同じです。わたし以外の方に教えたりはしていませんわ」
「…じゃあ、怪盗って一体…」
考え込む芽美に、聖良は「もしかして」と呟いた。
「わたしの母に香水のレシピを教えてくださった方のお知り合いかもしれません」
「それ、どういうこと!?」
いきり立つ芽美に聖良は説明した。
「あの香水のレシピは、以前、聖ポーリア礼拝堂に入ったドロボウさんから、母が教えられたものだそうです。母に説得されたその方は『もうドロボウは止める。今まで盗んだ物は全部返す』とおっしゃって、母に『もう必要がなくなったから』と、小さな香水瓶とレシピを渡して去って行かれたとか」
「じゃあ、その人が怪盗ってこと!?」
「さあ…。でも、母が言うには、その方は年配の女性だったらしいですけど…。芽美ちゃんが会われたのは若い女性ですよね？」
「う〜ん」と２人は考えこんだ。だが、結論は出ず、聖良はきびきびした口調で話を変えた。
「それより芽美ちゃん、迷える子羊からの相談をうかがったのですが、怪盗セイント・テールの助けが必要なのです」
それ以上の話は聞かずに、はその場を立ち去った。
怪盗セイント・テールの正体と、聖良に相談をした人の悩みが解決される理由を、は理解した。だが、それよりもを慌てさせたのは、聖良の母がの祖母を知っていたことだった。
実は、家は江戸時代に世間をお騒がせした怪盗、ねずみ小僧の子孫だった。家では代々、義賊として強きをくじき、弱きを助けてきた。
だが、祖母の代になって、とある街の礼拝堂で、信仰心厚い女性に諭されたのがきっかけで、祖母はカトリックに帰依し、ドロボウを辞めた。その信心深い女性というのが、どうやら聖良の母だったらしい。
事情があって、祖母はその時、自首せず、盗品をこっそり返していく道を選んだ。
それから１４年。祖母の意志を孫のが継ぐことになった。が怪盗として返している盗品は、家が先祖代々、盗んできた品物なのである。せっせと返し続けた甲斐あって、残る品物はあとわずか。それも聖華市にあるものばかりで、そのためには単身、この街に引っ越してきたのだった。
だが、ここに来て、怪盗の専任捜査官が２人も任命されてしまった。しかも、怪盗のルーツを知る者が聖華市にはいる。ドロボウを続けることの難しさを、は痛感せずにいられなかった。だが、どうしてもは怪盗として動かねばならない事情があった。
「…主よ。…あと少しだけ、あたしを怪盗でいさせてください…」
祈りの文句を呟きながら、はそっと十字を切った。
続く
＜あとがき＞
ついにやっちゃいました。セイント・テールドリ。しかも続き物（汗）どうなるんだ、これから。
しかも「セイント・テールはフリーのキャラがいないので、カップリングできない」と
ぼやいたら、くみちょさんが「飛鳥刑事はフリー」と貴重なアドバイスを！（おっとどっこい！）
親父ドリになるかどうかはともかく（笑）、テールのドリームは恋愛ネタよりも友情ネタ重視で
やっていきますので、よろしくお願いします。
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