星のララバイ・番外編
【ＳＡＹ ＹＥＳ】
パイプオルガンが華やかにメンデルスゾーンの結婚行進曲を奏でると、今まさに結婚式を終えた飛鳥大貴と羽丘芽美が、聖ポーリア礼拝堂の扉から歩み出た。
純白の礼服が凛々しいアスカJr.と並ぶ、純白のウェディングドレスの芽美は、最高に美しくかつ愛らしく見えた。
「おめでとう、芽美！ アスカJr.！」
「おめでとう！ 幸せにね！」
先ほどまで式に参列していた二人の親族や友人達が、一足先に表に出て、二人に向かってフラワーシャワーを浴びせかける。その列に混じったシスター姿のは、満面の笑みを浮かべて、花びらを新郎新婦に投げかけていた。
芽美とアスカJr.が披露宴の会場へ赴くため、リムジンカーに乗って去ると、親族、友人達もまた、用意されたリムジンバスに乗って、会場へ向かうことになった。
バスの急なステップを、裾の長いシスター服で上ろうとすると、バスの中からの手を取って、上らせてくれる大きな手があった。
「ありがとうございます」
礼を言って、下を向いていた頭を上げた途端、の瞳が驚きに見開かれた。自分の手を引いてくれた相手が、花婿の父――飛鳥友貴だったからだった。
「飛鳥刑事！？ ……あ、今は飛鳥署長でしたね。失礼しました。お久しぶりです。本日は本当におめでとうございます」
「ありがとう。こちらこそ、久しぶりだね。くん……いや、シスター、お元気そうで何よりだ」
そのまま、何となく隣同士の席に腰かけた二人は、バスが披露宴会場の聖華ホテルに到着するまで、おしゃべりを続けることになった。
が聖華市を去って、十年の年月が流れていた。学生時代は、聖ポーリア学院の友人達に会うために、時折、聖華市を訪れており、と飛鳥刑事が顔を合わせる機会もあった。だが、が正式なシスターになってからは、所属する修道会の規定により、自由な行動が制限されるようになったため、手紙でのやり取りが主になっていた。そして、シスターになったと同じく、年月を重ねた飛鳥刑事もまた、順調に昇進を続け、現在は聖華市警察署の署長になっていた。
だが、を見つめる穏やかな瞳も、優しい笑顔も、友貴は変わっていない。思わずは口に出していた。
「十年経っても、ちっともお変わりありませんね」
「そうかな？ 息子が嫁さんをもらうくらいだ。私はもう、ただのくたびれた独り者のおじさんだよ。それより、シスターは女優だったお祖母様に似て、ますますお美しくなられたな」
「飛鳥署長、わたしに敬語なんてお使いにならないで。どうぞ、昔みたいに名前で呼んで下さい」
ニッコリと言うを、友貴が眩しげに見る。
「くんは大人びて綺麗になっても、優しい性格は変わっていないようだね」
「……ありがとうございます」
心のこもった褒め言葉に、思わずは頬を染めた。
「いただいた手紙には、人里離れた修道院で祈りの日々を送っていると書いてあったが、生活は辛くはないかね？」
「……そうですね。わたしはまだ修行が足りなくて、時に人里が恋しくなる時もありますけれど、自給自足の毎日ですから充実しています。畑仕事や鶏の世話なども、生活の全てが神様に捧げる修行ですから」
修道院で、ひたすら神への祈りと修行の日々を送るにとって、今日は久々に羽の伸ばせる日ではあった。その気楽さもあったのだろう。つい、本音が出てしまう。
「晴耕雨読の穏やかな生活か。事件に追われる毎日の私には想像もつかないな」
「今は聖華市警察署の署長さんでいらっしゃるんでしょう？ お忙しいのでしょうね」
「まあ、リナくんのような若い警察官が頑張ってくれているからね。息子も私立探偵として、聖華市の平和に貢献してくれているし、聖華市はいい街だよ」
「高宮さんも立派な婦警になられたんですね」
バスの後方の座席で、佐渡真人らとおしゃべりしている高宮リナをちらりと振り返り、は微笑した。
そうやって話しているうちに、バスは披露宴の会場に着いた。またもやがバスを降りるのを手伝ってくれながら、友貴は何気なく尋ねた。
「しばらくは聖華市にいるのかね？」
「はい。修道院長様から外出許可をいただきましたから、今回は聖ポーリア修道院に一週間ほどお世話になってから、故郷に帰ります」
「そうか。ゆっくり楽しんで帰りなさい」
「ありがとうございます」
そして、友貴は披露宴会場の奥の、親族席へと向かうため、立ち去った。は、深森聖良や涼子や恭子と一緒で、会場前方の友人席である。と同じく、シスターになった聖良は、聖ポーリア礼拝堂に仕えて、聖ポーリア学院の教師をしている。涼子はＯＬになっており、まだ独身。恭子は去年、長年の恋人だった和菓子屋の跡継ぎと結婚して、店に立っている。
「芽美とアスカJr.は、今夜の飛行機で一週間の新婚旅行に行くそうよ！」
「行き先はフランス！ モン・サン・ミッシェルに行くんだって！ ちょ〜羨ましーい！」
恭子の言葉に、涼子が華やいだ声を上げる。聖良が穏やかにうなずいた。
「その後は、新居に移り住むそうですわ」
「涼子、後で新居の住所を教えてもらおうね！」
「モチ！ 新婚さんの愛の巣に遊びに行っちゃお〜！」
恭子と涼子が噂話好きなのは相変わらずのようだ。きゃいきゃいと楽しそうに語り合い、笑顔の聖良が相槌を打っている。その聖良がふと、不審げなまなざしをに向けた。
「……ちゃん？ なんだか、さっきからずっと、ぼんやりなさっていますわ。どうかしましたか？」
「え？」
聖良の言葉で我に返ったは、赤面した。
「嫌だ、わたしったら。久しぶりに大勢の人が集まる場所に来たから、人に酔ったのかも」
「ご気分が悪いのでしたら、少し席を外して休まれたほうがいいですわ」
気を遣う聖良に、「うん、そうする」とうなずいた。
「ごめんね。ちょっと外の空気を吸って来るよ」
涼子達にも頭を下げて、目立たないように席を立った。
ホテルのロビーの椅子に腰掛けて、はため息をついた。人酔いというのも若干はあるのかもしれないが、実はぼんやりしていた本当の理由は、友貴のことを考えていたためだった。
久しぶりにバスで話してから、どうも調子がおかしい。友貴を意識してしまう。もっとも、それも無理のないことかもしれない。にとって、最初で最後の、恋心めいた感情を抱いた相手と、数年ぶりに再会したのだから。
――アスカJr.が完全に独立して、家も出て行ってしまったら、飛鳥署長はお一人になってしまうのかな？――
ふと考える。この十年、友貴が再婚したという話は聞いたことがない。
――……それとも、飛鳥署長もこの機会に再婚されるのかも――
そう思った途端、胸に鈍い痛みが走った。痛みが走ったことに、自身が驚く。とうに諦めたつもりでいた淡い恋心を、いまだ自分が引きずっているとは、当人ですら思っていなかった。
しばらく、ぼんやりしていただったが、あまり長い間、席を外しては、同じ席の友人達が心配すると思い、席に戻ることにした。
ロビーから階段を中間階まで上がると、披露宴会場のある階となる。そのまま会場に入ろうとして、ギョッとしたのは、偶然にも扉の前に友貴本人が立っていたことだった。
「飛鳥署長？ 花婿のお父様が何をなさっているんですか？」
振り向いた友貴は火の点いたタバコをくわえたまま、苦笑した。
「……いや、実は会場内は禁煙でね。ガマンできなくて、ちょっと抜け出して来たところなんだ。見逃してくれないか？」
よくよく見てみれば、扉の横には喫煙者用の灰皿が置いてある。「見逃してくれ」とは、まるで犯罪者のようだと苦笑しながら、は友貴に尋ねた。
「アスカJr.が結婚して出て行かれたら、お寂しくはないですか？」
「いや、息子はもともと大学は海外だったから、一人暮らしはもう慣れたよ。家事の分担相手がいなくなって、最初は不便だったがね。今は一人でも適当にやれるようになった。人間、やれば何とかなるもんだ」
「……再婚はなさらないんですか？」
友貴は照れたように笑った。
「十年前にも同じことを聞かれたような気がするな。再婚する気はないよ。今更、こんなおじさんの相手をしてくれる女性もいないしね」
それは違うとは感じた。今や、聖華市警察の署長を勤めるほどの身分の上、友貴のように人柄のいい人物ならば、本気で探せば、ふさわしい再婚相手も見つかるだろう。結局は、彼自身が結婚に関心がないだけなのだ。
「嘘がお上手ですね」
思わず呟くと、ふいに真顔で友貴は返した。
「くんがプロポーズしてくれるなら、再婚してもいいな」
「えっ！？」
思わずすっとんきょうな声を上げてしまう。茹でたタコのように真っ赤になったを見て、友貴は楽しそうに笑った。
「嘘つき呼ばわりされた仕返しだよ。まさか神様から花嫁を奪えるとは思っていないさ」
「意地悪なことをおっしゃらないで下さい」
上目遣いに睨むと、「純情なお嬢さんをからかって、すまない」と、これまた明るい笑顔で謝られてしまった。
その時だった。階下のロビーから女性の悲鳴が上がった。
「ドロボウ！ 誰か助けて！」
ロビーにいた年配の女性から、バッグを引ったくって、ホテルの外へと走り出そうとする若い男性の姿が、真下に見えた。
「待て！」
とっさに友貴は中間階の手すりを掴むと、一気に飛び降りた。ところが、飛び降りた瞬間、「うっ！？」とうめくと、がくっと膝を折って倒れてしまった。
「飛鳥署長！？」
友貴が動けないと判断したは、手に持っていたバッグを引ったくり犯の足元に向かって投げた。狙いは見事に命中し、男は足にバッグの紐を絡ませてすっ転んだ。
たちまち、近くにいたホテルの客や従業員が数人がかりで取り押さえ、男は御用となった。
その後、披露宴終了まで、何とか出席した友貴は、終了直後に救急車で病院まで運ばれた。診断の結果は全治一週間のぎっくり腰だった。
病院のベッドでうなっている友貴を、アスカJr.と芽美、そしてが見舞った。
「オヤジもいい年して無茶するなよ。もう現場で犯人を追うんじゃなくて、指揮官として署長室から命令する立場なんだから」
呆れ返った様子のアスカJr.に「十年前なら、あれ位の高さ、どうってことはなかったんだ」と友貴が悔しげに言い返す。芽美が心配そうに口を挟む。
「……それより、お義父さんがこんな状態なら、新婚旅行なんて行けないよ。お医者さんが一週間は自宅で安静にするようにっておっしゃったんでしょう？」
「そうだな。オヤジもしばらく動けそうにないし、面倒を見てやらねーと」
「ちょっと待ってよ。せっかくの新婚旅行じゃない。二人とも楽しみにしていたんでしょう？」
慌てては二人を止めた。
「看病ならわたしがするわ。二人は新婚旅行に行って来て」
芽美とアスカJr.が驚いた様子で声を上げる。
「がお義父さんの看病を！？」
「本気か、！？」
「うん。幸い、修道院長様から、一週間の外泊許可をいただいているし、特に予定もないから、飛鳥署長の看病なら、わたしに任せて」
芽美とアスカJr.が『どうしようか？』と言った風情で、顔を見合わせる。は笑顔で二の腕の筋肉を曲げてみせた。
「大丈夫。家事もできるし、修道院では毎日、畑仕事をしているから、結構、力もあるんだよ？ 飛鳥署長を支える杖代わりにも、ちゃんとなれるから」
ベッドの上から友貴も口添えする。
「息子もなかなか休みが取れないところを、無理にスケジュールを空けたんだろう？ 私のことなら心配ない。何とかなるから、二人とも行って来なさい」
「そこまで言ってもらえるなら、にお願いしようか？」
「ああ。なら、昔から知ってる仲だから、安心だしな」
うなずき合う芽美とアスカJr.をはせかした。
「それより、飛行機の時間に間に合わなくなるよ。急いで支度して」
二人はそろってうなずいて、病室を出て行った。
「ありがとう、。よろしくお願いね。……お義父さん、お大事になさって下さいね」
「オヤジ、ちゃんと安静にしてろよ！」
二人の姿が消えた後、友貴は深く息をついた。
「やれやれ。仕事の忙しい時期でなくて良かった。……くん、看病を申し出てくれたのはありがたいが、気持ちだけで充分だ。無理しなくていいよ。私一人くらい、なんとかなるからね」
「とんでもないです。飛鳥署長には昔からお世話になっていますし、ちゃんと看病させていただきます。ボランティアのヘルパーとでも思って下さい」
は頑として譲らず、結局、友貴はの手を借りて、タクシーに乗りこみ、自宅へ戻った。
「今夜の夕飯は結婚式の引き出物で済ませるから、……痛たた……」
腰を押さえてうめく友貴に肩を貸して、二階の寝室のベッドへと導きながら、は告げた。
「ガマンなさらないで、何でも言ってください。必ず、お役に立ってみせますから。……もう、倒れた飛鳥署長をお助けできずに、おろおろすることしかできなかった、子どもじゃないんですよ？」
「リナくんに二人きりで閉じこめられた時のことかね？ そんなこともあったな……」
友貴は痛みをこらえて微笑んだ。は思わず、その笑顔にドキリとなった。
――やっぱり飛鳥署長は十年前とちっとも変わってない。優しい笑顔も気遣いも……――
心臓が早鐘を打っている。落ち着かなければと自分に言い聞かせながら、は友貴をベッドに横たわらせ、上から掛け布団を掛けた。
「引き出物を温め直して、飲み物と一緒にベッドへお持ちしますね。飲み物はお茶でよろしいですか？ 引き出物にはお酒もあったようですけれど」
「ああ、もう祝い酒は充分だ。熱いお茶が飲みたいな。済まないが、よろしく頼む」
素直に頼ってもらえたことが嬉しくて、はニッコリ笑って「はい！」と答え、友貴の寝室を出て行った。その後ろ姿を友貴が、どこか複雑な表情で眺めていたことには気づかなかった。
友貴が食事を終えた後、洗い物を片付けていたは、流れる水道の水に、あることを忘れていたことに気がついた。蛇口を閉めて、自然と重くなる足取りを無理に動かして、二階へ上がり、友貴の様子を伺う。
ドアの陰から、恐る恐る自分を眺めるに、ベッドに横たわっていた友貴はいぶかしげに首をかしげた。
「どうしたんだね、くん？」
「あの……」
尋ねる声が上ずって、頬が熱くなってしまう。
「お風呂はどうされますか？」
友貴の顔が酒のせいではなく、見るからに赤くなった。
「いや、風呂は、もうちょっと腰の痛みが治まってから、一人で入るから、かまわないよ」
「でも、きっとお疲れで、さっぱりなさりたいですよね。わたし、熱い濡れタオルを持って来ます。お体をお拭きしますから」
「くん、無理しなくていいよ。事件で忙しい時は、一週間くらい風呂に入る暇なんてないことも、ざらにあるんだ」
「いえ、でも……」
あくまで言い募ろうとするに、友貴は「勘弁してくれ」と根を上げた。
「君は若くて綺麗なお嬢さんで、私はくたびれてはいるが、男には変わりないんだよ？ くんにそこまで看病されるのは心臓に悪い。あまりいじめないでくれないか」
「……いじめだなんて……」
唇をキュッと結び、は食い下がった。
「わたしはただ、飛鳥署長のお役に立ちたいんです。せめてお背中だけでも拭かせて下さい。今、タオルを持って来ます」
ふいに友貴の声が真剣味を帯びた。
「どうして、そこまで親切にしてくれるんだね？」
「……それは」
――元クラスメートのお父さんで、色々お世話になったから？ それとも、十年前に怪盗として罪を負った自責の念があるから？――
どちらも違う、とは気付いた。気付いたら、言葉が先に零れていた。
「十年前からずっと、あなたのことが好きだからです」
口を滑らせたことに気付いて、その重大さに真っ青になる。神に仕える身のシスターが、男性に恋心を打ち明けるなんて、とんでもない話だった。両手で口元を押さえて、うずくまってしまいそうなほど、ショックを受けているに、友貴は優しく言った。
「くんも今夜は祝い酒でお疲れのようだ。私のことはもういいから、帰ってゆっくり休みなさい」
酒の上のたわ言として、何も聞かなかったことにしてしまうのが、友貴の優しさなのだろう。ようやく我に返ったは小さくうなずいた。
「……分かりました。また、明日伺います。お休みなさい」
逃げるように身を翻して、が部屋を出て行くと、友貴は深くため息をついた。
「くんがあんなことを言うなんて……。こっちが動けない状態でなかったら……」
――抱きしめていたかもしれない――
想いを、言葉を、胸の内に押し隠す。十年間、が友貴を見て来たように、同じ十年をかけて、蕾が花開くように美しく成長して行くを、友貴もまた見守っていた。そして、いつしか、一人の女性としてに惹かれるようになっていた。だが、彼女は出会った時から、神様の物で、だから、父親のように見守るだけでいいと思っていたのに……。
痛む腰をさすりながら、友貴はうなった。
「一週間も二人きりで我慢できるかな……？」
――自分がに向けている想いは、決してに悟られてはならない。好意を口走っただけで、ひどいショックを受けていた、信心深いのことだ。自分もに惹かれていると知ったら、きっと悩み、苦しんでしまうだろう。何とか理性を保たなければ――
友貴は胸の内でそう決意していた。
一方、もまた、聖ポーリア礼拝堂へ走りながら、半泣きになっていた。友貴に告白するなんて、自分は何ということをしてしまったのだろう。頭の中がぐるぐるする。
礼拝堂の十字架の前に辿り着いたは、倒れこむようにひざまずき、必死で祈った。こらえても、涙が溢れて止まらない。
「主よ、罪深いわたしを、どうかお許し下さい……！」
「ちゃん？ どうしたんですか？」
不思議そうに礼拝堂の奥から姿を現した聖良が、が泣いているのを見て取って、優しく腕を差し出す。思わずその手に、はすがりついた。
「聖良……！」
は泣きながら、友貴の看病を引き受けた経緯から、そして自分が口走ったことを全て告白した。
「聖良、わたしはシスターなのに、許されない罪を犯してしまったの！」
「落ち着いて、ちゃん。お酒も飲んでいたし、誰だってうっかりとあやまちを犯すことくらいありますわ」
は頭を横に振りながら、「違うの」と呟いた。
「ひとときのあやまちじゃないの。あれはわたしの真実の気持ちなの。……飛鳥署長はアスカJr.のお父さんだし、わたしは神様に仕える身だと思って、諦めたつもりでいたけれど、本当はわたし、飛鳥署長がずっと好きだったって、気付いてしまったの」
片手での手を握り締め、もう片方の手での背中を撫でながら、優しく聖良は告げた。
「聖書には神を愛し、自分を愛し、他人を愛せとありますわ。シスターも人の子。人を愛することがあってもおかしくありません。きっと神様もお許しになりますわ」
聖書の説く愛は『慈愛』の愛であって、『恋愛』の愛ではないと、聖良もも分かっていた。それでも聖良の許しの言葉は、の心に束の間の安らぎをもたらした。
「これから一週間、どうなさいますか？ 飛鳥署長のお世話は、わたしが代わりましょうか？」
優しく尋ねる聖良に、は少し落ち着いて、答えることができた。
「ありがとう。でも、聖良は聖ポーリア学院のシスターとしての仕事があるから無理だよ。……大丈夫。飛鳥署長は『酔った上での冗談』だと思って下さっているし、どうせ、わたしの片想いだもの。一週間が過ぎて、元の祈りの生活に戻ったら、忘れることはできなくても、諦めることならできるわ。……神様に仕える身でいながら、男性に恋をしてしまった罪は、自分の修道院に帰ってから、修道院長様に告解を受けてもらうことにする」
聖良は何かを言いかけて、それを止め、「そうですわね」と微笑んだ。
「さあ、今日は色々あって疲れたでしょう。もうおやすみなさい」
聖良にうながされ、は素直にうなずいた。
「話を聞いてくれてありがとう、聖良。おやすみなさい」
は自分に与えられた、礼拝堂の奥にある修道院の一室へ戻って行った。
一人、礼拝堂に残った聖良は、先程は口にしなかった言葉を、祭壇に向かって問いかけた。
「主よ、……もし、飛鳥署長もちゃんを愛しておられたとしたら、一体、二人はどうなるのでしょう……？」
他の者は誰も分かっていないようだったが、聖良だけが気付いていた。友貴の、へと向ける眼差しが時折、包みこむような優しさと真剣さを帯びることを。
「……ちゃんと飛鳥署長に、神のご加護がありますように……」
聖良は腕を組んでそっと祈りの言葉を口にした。
翌朝、昨夜の告白の後悔を引きずったまま、は飛鳥邸へ赴いた。友貴から預かった合鍵で家の中に入ると、思いも寄らない先客がいた。
「やあ、さん」
キッチンから片手にフライ返しを持って顔を出し、明るく挨拶したのは、なんと佐渡だった。
「佐渡くん！？ どうしてここへ！？」
驚いているに、佐渡は「あれ？ さんは知らないんだっけ？」と小首をかしげた。
「オレは今、聖華新聞社の刑事事件担当部局に勤めてるんだけど、聖華市警察署長の番記者をしているんだよ」
「『番記者』って確か、政治家やプロ野球の監督の傍について、言語録などをレポートする記者さんのことね」
「そう。警察署の署長にも番記者がいるんだ。言語録まではレポートしないけれど、事件が起こった時に詳しい情報を真っ先に報告されるのは署長だからね。日頃から署長の様子伺いをするようにして、事件が起きた時は、まず署長の所へ行って話を聞く事で、最新情報を手に入れるように努力する。事件記者の大事な仕事のひとつだよ」
そこまでは真面目に説明していた佐渡だったが、学生時代と変わらない、朗らかな笑みを浮かべて、つけ加えた。
「今の署長はアスカJr.のお父さんだから、息子の元クラスメートのオレを、気軽に家に招き入れてくれるんだ。……肝心の事件の取材になると、捜査に支障が出ると困るって、なかなかネタを明かしてもらえない厳しい署長さんだけどね」
「それで、今日は何をしていたの？」
「お見舞いも兼ねて、昨日の聖華ホテルでのひったくり事件について聞きに来たんだ。そうしたら、全治一週間の診断を受けて、さんに看病されているって話で、しかも昨夜、お風呂の介助をするかしないかで、もめたんだって？」
冷やかすような佐渡の口ぶりに、は顔を赤らめてうつむいた。
「その話を聞いて、背中ならオレがお流ししますよって、さっきまで署長の朝風呂を手伝ってたんだ。だから、もうさんは飛鳥署長のお風呂の件は心配しなくていいよ。どうせ、しょっちゅうこの家に出入りしてるんだ。風呂の介助くらいは男のオレがするから」
には秘密にされていたが、実は風呂の介助は、佐渡と友貴が親しいことを知っている聖良から、佐渡がこっそりと頼まれたものだった。佐渡は聖良がシスターになった今も、聖良のことを一途に慕っており、その頼みとあれば、例え火の中、水の中と駆けつけていた。
フライ返しをにひょいと手渡して、佐渡は告げた。
「ところで、飛鳥署長に朝食を作ろうと思ったんだけど、さすがに勝手が分からなくてさ。さん、準備してくれる？」
は「はい」とうなずいてから、慌てて「佐渡くんの朝ご飯は？」と尋ねた。
「オレは朝食を食べてから、ここに来たんだ。取材も済んだし、今日はもう帰る。明日また来るよ。ただし、困ったことが起きたり、男手が必要な時は、いつでも呼んでくれよな。すぐに飛んで来るから」
「ありがとう、佐渡くん」
は心をこめて礼を言った。風呂の件が解決しただけでも充分にありがたかった。
佐渡を見送った後、冷蔵庫にある物で作った朝食を持って、二階の友貴の部屋へ行くと、新しいパジャマ姿で、見るからにさっぱりした様子の友貴が、ベッドに横になったまま、文庫本を読んでいた。
「おはようございます。朝ご飯をお持ちしました」
「おはよう、くん。……美味しそうだね、ありがとう」
文庫本に栞を挟んで脇へと置く友貴に、何気なく尋ねる。
「何の本を読んでいらしたんですか？」
「コナン・ドイルの推理小説だよ。息子はシャーロック・ホームズのファンで、全集を集めていたからね。退屈しのぎには推理小説と刑事ドラマに限る」
「でも、テレビの刑事ドラマって嘘が多いって聞きますけど。プロの警察官さんにはつまらないんじゃないですか？」
「いいや。刑事ドラマでは、どんな大事件も、たった一時間で全て解決してしまうんだよ？ いつ見ても、実に羨ましい」
真面目くさって言われて、思わずは吹き出した。友貴はの笑顔に釣られたように笑った。
「うん。やっぱり、くんは笑ったほうが可愛いな」
くしゃりと頭を撫でられて、の心臓がどきりと跳ねる。
「もう、昔のように、ふっと暗い表情を見せることはなくなったね。良いことだ」
十年前、飛鳥刑事に『唐突に暗い表情を見せる』と指摘され、『守ってあげたい』と告げられた時のことを、は思い出した。思わず胸元を片手でキュッと押さえて告げる。
「……わたしが明るくなったとしたら、それは飛鳥署長のおかげです、きっと」
初めて出会った時から、ずっと友貴は温かくを見守り続けてくれた。怪盗として重い使命を背負っていた時も、それから解放された後も、友貴の優しいまなざしや言葉は、いつでもの支えだった。
――ダメだ。わたし、今、すごくドキドキしてる……――
神に仕えるシスターとして、友貴に惹かれる気持ちを抑えようとしながらも、同時にはこうして友貴の傍にいられる喜びを感じずにはいられなかった。
――この一週間だけ、飛鳥署長の傍にいよう。そして、もう二度と聖華市には来ないようにしよう。この一週間の思い出さえあれば、きっと一生、幸せだから――
「朝食が冷めないうちにどうぞ」
友貴に笑顔で勧めながら、はそう決意していた。
恋人同士の蜜月のような一週間は、あっと言う間に過ぎた。は友貴の気持ちを知らなかったが、二人は互いに、恋しい相手がすぐ傍にいて、微笑んでいてくれる幸せを実感しながら、穏やかな日々を過ごしたのだった。
そして、明日は芽美とアスカJr.が帰国するという日の夜。夕刻から降り出した雨が徐々に強くなっていた。
ほぼ腰も完治し、と一緒にダイニングで夕食を取っていた友貴が、テレビの天気予報を見ながら、「雷が鳴り始めないうちに、くんは早めに礼拝堂へ帰ったほうがいい」と心配そうに言った。天気予報では今夜の聖華市は激しい雷雨になると告げていた。
明日には聖華市を出て、故郷へ帰る予定のは、友貴との別れの時間が迫っていることを寂しく感じながらも、うなずいた。
「はい。食後の洗い物が終わったら、帰らせていただきます」
その時、飛鳥家の電話のベルが鳴った。友貴が出ると、すぐに「シスター聖良からだ」と言って、に受話器を手渡した。
「もしもし」
が電話を替わると、困った口調で聖良が「ちゃん？」と呼びかけて来た。
「そちらは停電になっていませんか？」
「え！？ 電気なら点いてるけど、どうしたの！？」
「実は少し前に聖ポーリア学院の近辺に雷が落ちたようなんです。今、礼拝堂と学院全体が停電になって、騒ぎになっていますの。電力会社にもお電話したんですが、復旧まで時間がかかるそうで、もしできるようなら、今夜は飛鳥署長のお宅に泊めていただいたほうがいいと思いますわ」
かつてのドロボウ稼業のおかげで、夜目には自信のあるは「それより、わたしに何か手伝えることはない！？ 急いで帰るよ！」と慌てて言った。だが、聖良は「いいえ」と答えた。
「お気持ちはありがたいんですが、実は被害状況を確認するために、シスター達総出で学院内を見回っているので、非常用の懐中電灯やロウソクの数が、ちゃんの分まで足りませんの。今、こちらは暗くて危ないですから、そちらが停電になっていないのなら、ちゃんはそのまま安全な場所にいて下さい」
ならば明かりなど必要ないのだが、まさかそんなことを正直に言うわけにもいかない。
「分かった。飛鳥署長に事情をお話して、お願いしてみるよ。聖良も気をつけて」
よほど慌てていたのだろう。返答もそこそこに聖良は電話を切った。その時、遠雷の響きがの耳にも聞こえて来た。雷がこちらにも近づいて来たようだった。
「どうしたんだね？」
心配そうな友貴に事情を説明すると、「そういう事情なら、ここにいたほうがいい。聖ポーリア学院のことも気がかりだろうが、元生徒とは言え、通常の業務に携わっていないくんは、かえって忙しいシスター方の負担になるかもしれない。うちなら幸い、客間も空いているから、泊まっていきなさい」と助言された。
確かに友貴の言う通り、非常時の体制で動いている状態の礼拝堂に、のこのこと客人であるが手伝いに帰っても、足手まといになるだけかもしれない。は素直に「お世話になります」と頭を下げた。
洗い物を終えて、風呂を使わせてもらい、就寝の支度に入る頃には、雨足はかなり激しく、雷の音も近くなっていた。
居間にいる友貴に「おやすみなさい」と挨拶して、与えられた客間に行こうとした時、ふいに巨大なガラスが粉々に割れるような落雷音が間近で響いた。同時に部屋の電気が消える。
「きゃっ！？」
停電という事態より、落雷の激しさに怯えて、は悲鳴を上げた。
「無事か！？」
すぐに友貴の声が傍で聞こえ、を守るように肩を抱かれた。タバコの臭いがの鼻をくすぐる。
「平気です。ちょっと驚いただけで……」
答えかけて、再びの閃光と落雷音に声を失う。次々に眩い稲光が飛び交い、ほぼ同時に耳をつんざくような落雷音が響く。カーテンの隙間から見える外は、もう夜九時近くだというのに、真昼のように明るかった。度胸には自信のあるだったが、こんなに激しい雷雨を体験するのは生まれて初めてで、小さく悲鳴を上げると、半ば無意識のうちに震える手で友貴の腕にすがっていた。
「私の経験上、こういう雷はそう長くは続かないから、安心しなさい。一、二時間もすれば静まるだろう」
落ち着いた声が頭の上から聞こえて、少し安堵する。だが、まだ震えが止まらず、友貴にすがった手は離せなかった。
「……参ったな」
友貴がぼやき、に「歩けるかね？」と問いかけた。
「は、はい」
ぎこちなく答えると友貴はの肩を抱いたまま、居間のソファに移動した。閃光と落雷音が響くたびに全身を震わせるを、友貴は胸元に抱きしめた。友貴の体に包まれて、閃光が見えなくなる。落雷音は続いているが、光が遮られたことで、の震えがいくらか収まった。
「雷が静まるまで、わたしが傍にいるから安心しなさい」
友貴の声が耳元で聞こえ、体温がじかに伝わって来る。雷の恐怖と友貴に抱きしめられているという緊張で、最初はカチコチに強張っていただったが、繰り返し「怖がらなくても、大丈夫だ」と優しくささやかれる声と、しっかりと守ってくれる友貴の腕に、次第に緊張が解かれていった。
――飛鳥署長の腕の中って、とてもがっしりしていて温かい……。なんだかすごく安心する……――
友貴の予想通り、雷は少しずつ遠ざかっていった。その直後に配電が再開したらしく、電気が点いた。長時間、あまりにも怖がりすぎていたのだろう。ホッとしたを、次に襲ったのは強烈な眠気だった。
「くん？」
友貴が問いかける声がしたが、もう答える力も残っていなかった。そのまま友貴の腕の中で、は寝入ってしまった。
一方の友貴は、すっかり安心しきって眠っているに、思わず天井を仰いでいた。
「……おい、神様、こいつは拷問だ」
愛しく思っている女性が、実にあどけない表情で自分の腕の中で眠っていて、しかも決して手を出してはいけないというのだから、男として、これ以上、残酷な仕打ちはないと言うものだった。
客間に連れて行って、布団で寝かせてあげたかったが、情けないことに、ぎっくり腰が完治していない状態で、を取り落とさずに運んでやれる確信が持てなかった。
せめてをソファに寝かせて、掛け布団を取って来ようと立ち上がりかけると、友貴の腕にかかっているの手がきゅっと握られた。
「……行かないで……」
小さなの声に「目が覚めたのかね？」と呼びかけるが、の瞳は開かない。寝言のようだった。
友貴はため息をつくと、自棄になって呟いた。
「君が望むなら、今夜はこのまま傍にいよう。神様に恨まれて、地獄に落ちたってかまうものか」
手近にあった、テレビを見ながらソファでごろ寝する時に使う、短めの毛布を取って、自分達にかける。
今夜は一睡もできそうにないと思った友貴だったが、規則正しいの寝息と腕の中の柔らかな温もりに促されて、やがて眠りに落ちていった。
目が覚めたのはが先だった。庭の小鳥が鳴く声とカーテンの隙間から漏れ出す光に、ぼんやりと覚醒が促される。そして、自分を包む穏やかな温もりに、再び眠りに誘われそうになりながらも、それが毛布と違う感触だと気付いた途端、一気に眠気が吹き飛んだ。
「……あ、飛鳥署長っ！？ わたし、一体、どうして……！？」
パニックを起こして、じたばたもがくに、友貴も「……ううむ」とうなって、瞳を開いた。のほほんと朝の挨拶をする。
「ああ、くん。おはよう」
「……あ、あの、飛鳥署長、わたし、どうして飛鳥署長とご一緒に眠っていたんでしょうか！？」
オロオロと尋ねるに、友貴は困ったように頭をかいた。
「昨夜、雷が鳴り止んだ直後に、くんは眠ってしまってね。客間に連れて行くか、せめてソファに寝かせてあげたかったんだが、放してもらえなくて……」
はいまだに自分の右手が、しっかと友貴の腕を掴んで、放していないことに、ようやく気がついた。パッと手を放して、平謝りに謝る。
「本当に申し訳ありませんでした！！！」
「謝ることはないよ。それより、良く眠れたかな？」
は真っ赤に頬を染めて、「……はい」とうなずいた。
「それなら良かった。今日は故郷に帰る日だね。一週間、世話になった。本当にありがとう」
友貴は腕を広げ、大切な小鳥を空へ放つように、そっとから離れようとした。友貴の温もりが自分から離れていくと感じた瞬間、は無意識のうちに友貴の腕を再び掴んでいた。
「くん？」
友貴がいぶかしげに問いかける。すぐに手を放さなければと思うのに、友貴の傍を離れたくない気持ちが確かにあった。シスターとしての自分と、恋をしている自分と、心が二つに裂かれるようで、はうつむいて、「ごめんなさい」と何度も繰り返しながら、涙を零した。
ふいに友貴の両腕がを強く抱きしめた。
「泣かないでくれ」
の涙を拭おうとするかのように、友貴の唇が頬に触れる。驚きにの涙が止まった。苦しげな声が友貴の口から漏れる。
「君には何も伝えないつもりでいた。だが、神様は許してくれなくても、言わせてくれ。……くん、君を愛している。相手がこんなおじさんでもかまわないなら、シスターをやめて、私と結婚して欲しい」
友貴が腕を回した拍子に留め金が緩んだのだろう。の胸元から銀の十字架が滑り落ち、床に鈍い音を立てて転がった。だが、は十字架を拾おうとはしなかった。
「はい」
小さく、しかし、はっきりとはうなずいた。
「わたしもあなたを愛しています。……それが罪だと分かっていても、忘れることはもうできません」
「ありがとう」
友貴の真っ直ぐな瞳がの瞳を覗きこみ、優しく微笑んだ。
と友貴の婚約は、周囲を驚かせた。一番、仰天したのが、新婚旅行から帰国したばかりの芽美とアスカＪｒ．であり、一番、渋い顔をしたのが、の所属する修道院の修道院長だった。だが、二人は辛抱強く周囲の説得に当たり、彼らの固い決意に、の家族や修道院の厳しいシスター達も折れずにはいられなかった。
ただ一人、聖良だけが「いつかはこうなるような予感がしていました」と言って、静かに笑みを浮かべていた。
そして、一年後、と友貴は聖ポーリア礼拝堂で結婚式を挙げた。親族とごく親しい友人のみを招いた、ささやかな式だった。
夫婦となる誓いの言葉を述べ、指輪の交換をした後、司祭が二人を促した。
「では、誓いのキスを」
友貴がに近づいて、ウェディングヴェールを持ち上げる。
友貴は可憐な花をそっと愛おしむかのように、にふわりと口づけた。友貴が一歩退いて、二人の瞳が間近で合った時、と友貴は心の底から微笑み合った。
礼拝堂の鐘が高らかに鳴り響く。晴れて夫婦となった二人の、永遠の幸せを宣言するかのように。
終わり
＜あとがき＞
『星のララバイ』の連載終了後、飛鳥刑事とヒロインをくっつけて欲しかったというご意見をいただきまして、
未成年と警察官との恋愛は倫理的にＮＧだけど、成人した後ならいいかなあと、二人の恋物語を書いてみました。
ちなみに、ネットで調べたところ、正式なシスターになるには、最低でも２８才までかかるそうです。
ですので、原作で芽美とアスカＪｒ．が婚約した時点では、聖良はまだシスター見習いのはずです。
このパロディでもヒロインは２４才という設定ですので、当然、正式にはシスターになっておりません。
ですが、聖良もヒロインもシスターになっているという設定で書いております。
嘘を承知で書いていることをお許しください。
あと、「シスターが恋をするなんて不謹慎！」と思われた方、申し訳ございません。
『サウンド・オブ・ミュージック』の前例もありますし、寛大な心でお許しいただければと思います。